2022/05/14

馬見原 新茶製造のはじまり

 


熊本 4日目。岩永さんのところでは、今日からお茶摘みが始まった。

ここ馬見原は標高が600mほどあり寒冷なため、同県内のほかの地域と比べてもお茶摘みの開始が遅めになる。

たとえば同じ熊本の芦北や水俣、それに宮崎県の日之影といった地域を訪ねたところ、ほとんど1番茶の茶摘みは終了していた。

昨日までの雨が止む予報だったし、雨雲レーダーによれば今朝の時点で熊本県内で雨の降っている場所はなかった。しかし馬見原では霧雨が昼前まで続いた。山間ではよくあることなのだろうか。そのため、雨が止むとまずは濡れているお茶の露を払ってから、3人がかりで運ぶ摘採機を使って茶摘みが始まった。

摘採機は巨大なバリカンのようなもので、「摘む」とは言うものの実際には刈り取っている。刈った葉は風で後ろの袋に送られる仕組みだ。バリカンを畝の両側で持つ人がふたり、そして袋を持つ人がひとり必要な作業。息が合っていないと皆がシンドイ思いをする作業だから、いつやっても緊張する。

摘んでは袋を取り替えて、茶葉の重量を測ってからトラックに満載にして、同町内の菅尾共同製茶工場へ運び込む。すると、昨日の朝ご自宅でお話を伺った小﨑夫妻がお茶の積み下ろしをしており、これから煎茶の製茶をしようとしているところだった。(小﨑さんは釜炒り茶と煎茶の両方を作っている)

小﨑さん、御年70をゆうに過ぎているし、シンドイと口には出しているものの、高いコンテナからひょいと飛び降りたり、重たいものを平気で抱えていたりする。

さて運ばれた岩永さんのお茶は、共同製茶工場での仕事に携わる様々な方々の連携があって荒茶となる。これは滋賀の政所などで見られる製茶と同じような仕組みだ。

※荒茶は水分量をある程度まで抜き、しばらくの保存に耐えられる状態にしたもの。荒茶は再製加工(選別や再乾燥など)を経て仕上げられ、様々な商品となる。

在来種の荒茶は、とても好ましい感じに出来上がっていた。甘涼しく、本当に出来たばかりの荒茶のさわやかなにおいがする。その香りをここでお届けできないのは残念というか、ここに居るものだけの特権というか、いいだろ〜と自慢したくなるというか(ごめんなさい)。岩永さんも、さらなる仕上げに向けて期待を膨らませている様子で、僕も嬉しく思う。



午後にはヤブキタの茶摘みも行われた。この分の製茶は明日の早朝から工場で行われることになっているので、僕も朝早くからその模様を拝見しに向かうことになった。(基本的に手出しできる部分はなく、目で勉強するばかりだ)

一年の収入を大きく左右する作業が連続する。ややピリっとした雰囲気を全身に受け止めつつ、作業から開放されたあと岩永家の皆さんと囲んだ夕食はたいへん美味しかった。

これら全ての作業の、肌感覚、会話、音ににおい。僕にとっては、他には変えられない財産となる。

馬見原の夜は更けゆく。心地よい疲れとともに、作業はまた明日に続く。おやすみなさい。

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